近年、働き方や雇用形態の多様化に伴い職場の労務環境は複雑化する傾向が強くなり、社労士の需要は拡大していくと言われています。

働き方改革に伴い頻繁に法改正が行われる度に、企業の経営者や人事労務担当者は情報を正しく理解し運用しなければなりません。
これはとても労力のいることで一時的にかなり負荷がかかってしまいます。

そんなとき、労働・社会保険分野のプロである社労士の力が必要不可欠なのです。
そのため、社労士の独占業務の3号業務に相当するコンサルティング業務への需要が高まっていくと言えます。
将来的に社労士の仕事がAIに奪われてしまうのでは？という声をよく耳にしますが、クライアントからの相談事は多岐に渡ります。
クライアントの不安や課題に寄り添い、一緒に解決していくことができる社労士は健全な経営や人事労務運用には欠かせない重要な存在なのです。

社労士の転職先で人気の職種を3つ挙げてみました。

● 社会保険労務士事務所・社会保険労務士法人
● 会計事務所・税理士事務所
● 企業の人事総務部門

自分が実現したいキャリアアップを明確にするために参考にしてみてください。

社労士の転職先として代表的とも言えるのが、社労士事務所です。

社労士事務所が社労士の転職先として人気が高い理由としては、社労士資格を取得する際に得た知識がダイレクトに活かせることです。
労働保険・社会保険手続き、各種申請業務にはじまり、多様な労務相談や人事制度の運用・改定に携わり、クライアントとの関係性を構築すればするほどキャリアの幅も広がります。

また、頻繁に行われる法改正時にはクライアントにとって負担が生じやすく、社労士として力の見せどころです。
クライアントが健全に経営し存続していくために貴重なアドバイザーとして経験を積むことで自身のキャリアアップにもつながっていくのです。

しかし、社労士事務所に転職する際に注意すべきポイントとしては、現職（前職）の事務所では実現できないキャリアアップができるかどうかを事前に確認することだと言えます。
現職（前職）の社労士事務所がペーパーレスに積極的でなかったり、今の時代にそぐわない古い慣習が残っていたりすることでキャリアアップが図れないという悩みを抱えている方は少なくありません。

応募先の事務所の業務環境や社風などについて、事前に情報を収集したり面接の際に漏れなく質問したりすることをしっかりと頭に入れておきましょう。

会計事務所や税理士法人などの士業事務所にとって、社労士を採用するメリットがあります。

会計事務所や税理士事務所では、クライアントの税務に関する総合的な実務代行やコンサルティングを行っていますが、実は労務に関する相談事も多いのです。
その際に、労働・社会保険のプロである社労士が事務所に在籍していることによりコンサルティングの幅が広がり、クライアントの多様なニーズに応えられる顧客満足度の高い事務所になり得ることができるのです。

社労士業務は他の士業事務所との親和性も高く、社労士として活躍しながら税務や他の法律などプラスアルファの知識も身に付けることができ、キャリアの幅を広げるチャンスがあるかもしれません。

社労士の転職先として注目を集めつつあるのが、企業の人事総務部門です。
特に、社労士事務所で働いてきた方にとっては魅力的な転職先かもしれません。

人事総務部門はどの業界の企業にも存在し、同じ人事労務の仕事でも業界ごとの特性に応じた様々な経験を積むことでキャリアアップが図れます。
自分の興味のある業界に転職することで、社労士事務所では得られなかったやりがいを感じたり、自分の理想とする働き方が実現できるかもしれません。

また、企業の人事総務部門では、社労士レベルの知識や経験を有する社員も在籍していますが、俗人的になりやすく煩雑化する労務管理業務は非効率になりがちです。
労働や社会保険分野のプロである社労士は、部門のメンバーにとって非常に頼れる存在となり得るのです。

社労士として実務経験を有しているみなさんの年代に応じた、転職を成功させるためのポイントを整理してみました。
転職市場は年齢が大きく影響するといっても過言ではありません。
自分の年齢や経験を踏まえ、転職を成功させるポイントを押さえておきましょう。

● 30代の転職成功のポイント
社労士として実務経験や知識をアピールすることがポイントです。
担当していたクライアントの規模や、どういうポジションの人とどんなやりとりをしていたのか、など自分の経験をしっかり棚卸することが重要です。

● 40代の転職成功のポイント
即戦力として活躍できるかどうかが採用側が重視するポイントです。
社労士としての知識や経験に加え、クライアントの難解な課題解決の事例などを踏ま　　　えてアピールすると、採用担当者に入社後の活躍の再現性が伝わるでしょう。

● 50代の転職成功のポイント
マネジメントの経験値が転職成功のポイントとなります。
管理者として部下を指導育成経験や、業務の裁量権なども採用する側にとって重要な要素となります。
現職（前職）の経営にどこまで影響のあるポジションであったのかをアピールすることも大切です。

社会人としてある程度経験があるからこそ転職活動の際に見落としがちなことがあります。

社労士としての経験を活かすべく転職活動をする際には、転職の基本的な心構えを今一度しっかりと頭に入れておくことが重要です。

社労士の転職活動の際に意外とネックになってくるのが年収の問題です。
転職の目的として年収をアップを叶えたいケースもありますが、希望通りの年収を実現させるためにはそれに見合った実務経験を有する必要があります。
将来的に目標とする年収に到達できるのであれば、目先の年収にこだわりすぎてチャンスを逃さないようにしましょう。

厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると社労士の経験年数と年収については以下の通りです。
独立開業している社労士も含まれているため、社労士全体の平均年収が高く算出される傾向が見られます。

希望の年収を考える際の参考にしてみてください。

経験年数　　　　　男性　　　　　　女性
1年～4年　　　　約794万円　　　約727万円
5年～9年　　　　約1,079万円　　約657万円
10年～14年　　　約1,083万円　　約715万円
15年以上　　　　約1,247万円　　約721万円

働き方改革やコロナ禍をきっかけに社労士の働き方も変化が生まれ、在宅勤務を導入する事務所や企業も増えています。
それに伴い、社労士転職市場でも在宅勤務を希望する声が高まっています。

在宅勤務には通勤ストレスを軽減できたり柔軟なスケジュール調整が行えるなどメリットも多いです。
特に子育てや介護など家族の事情をかかえる方にとっては仕事との両立が可能となり人気は増え続けています。

在宅勤務はメリットが先行しがちですが、在宅勤務をするためにはビジネスパーソンとしてのある一定のスキルが伴っていないと、業務効率が下がったり求められる成果を上げることはできません。

職場で業務を行うときと同じレベルのコミュニケーションをchatworkやslackなどのツールを使って文章で的確に情報連携をするスキルや、Web会議のツールをスムーズに使いこなすことなどが求められます。

在宅勤務をはじめとする働き方のみに固執しすぎると、本来の目的であるキャリアアップの実現から遠ざかってしまわないようにしましょう。

応募先の採用担当者との電話やメールでのコミュニケーションは、そのまま業務に臨む姿勢を反映するといえます。

転職活動中は、まめにメールをチェックしたり応募先の電話番号を登録しておくなどスムーズにコミュニケーションが取れるよう、社会人としての基本的なマナーを今一度心がけることが大切なのです。

いかがでしたでしょうか？

今回は、社労士としてキャリアアップを実現したいと考えている方に向けて、転職活動の成功のためのポイントをはじめ、キャリアアップの方向性をイメージしていただけるような情報をお伝えしました。

わたしたちの生活に直結する労働や社会保険分野のエキスパートである社労士のみなさんは、社会貢献度の高い仕事に携わる貴重な存在です。

社労士としてさらなるキャリアアップを図り、組織やクライアントへの貢献度が高まることでやりがいに満ちた毎日を過ごせるようになったり、年収アップや理想の働き方ができることで生活が豊かになったりするなど、夢が広がりますね。

本記事が社労士のみなさんにとって、いきいきと活躍できるフィールドと出逢うきっかけになれればと願っています。