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登録日:2024年09月20日

社会保険の適用拡大でどう変わる?会社・従業員それぞれのメリット・デメリットは?
社会保険の適用範囲については2016年10月にから段階的に広がっていますが、2024年10月以降は従業員数51人以上の企業にも拡大され、要件に当てはまるパート・アルバイトの従業員にも加入義務が生じます。

本記事では2024年10月以降の社会保険の適用拡大について制度の概要、会社と従業員それぞれのメリットデメリット、よくある質問をまとめました。

2024年10月以降の社会保険の適用拡大

2024年9月までの社会保険の加入要件
2024年9月までの社会保険の加入要件は以下のとおりです。
①正社員または週の所定労働時間が正社員の3/4以上の従業員
②以下の全てに当てはまる方
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金が月額8.8万円以上
・雇用期間の見込みが2ヶ月以上
・学生ではない
・事業所の従業員数が101人以上
2024年10月以降どう変わる?
2024年10月以降も①の要件について変わりはなく、②について事業所の従業員数が「101人以上」から「51人以上」に変更されます。

「51人」という人数については、法人の場合は法人番号が同一の全事業所の従業員数を合計してカウントされるため、相当数の企業が対象になります。新たに対象となる従業員数51人以上の企業には、日本年金機構から対象となることを知らせる案内が2024年9月上旬までに届いているかと思います。

社会保険適用拡大による会社と従業員のメリット・デメリット

会社側のメリット・デメリット
会社側のメリットとしては、「社会保険完備」として求人面でのアピールができることが挙げられます。

デメリットとして考えられるのは社会保険料の負担の増加と、社会保険関係の手続き・毎月の給与計算の事務負担の増加です。
従業員側のメリット・デメリット
従業員側については社会保険料の負担増というデメリットの印象が強いのではないでしょうか。

実際にどれくらい負担が増えるのか具体例を見てみましょう。適用拡大により加入対象となる最低ラインの標準報酬月額88,000円の場合、月々の社会保険料は次の通りです。
健康保険:4,391円
介護保険:704円※介護保険第2号被保険者(40歳~64歳)に該当する場合
厚生年金:8052円
(2024年度 東京都の場合)

88,000円の給与から約13,000円の社会保険料が控除されると考えると影響は大きく、社会保険への加入に悪い印象があるのも無理はありません。

ただ、社会保険に加入することには保険料負担のデメリットだけでなく、将来もらえる年金額が増える・出産、傷病で会社を休んだ際に給与の約2/3が健康保険から支給されるなどのメリットがあります。

とくに出産手当金・傷病手当金は扶養に入っている場合は受けられない給付です。傷病手当金はけがや病気で仕事を休んだ際に最大で1年半の間給与の約2/3が支給され、もしもの際の備えになります。

社会保険の適用拡大に関するよくある質問

絶対に加入したくないと言う従業員がいるがどうしたらいい?
社会保険加入の要件を満たすと加入を拒否することはできません。

年金事務所からの調査で加入していないことが発覚した際は、最大2年分の保険料をまとめて徴収される恐れがあります。また、悪質な対応をした場合などには6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金を科される可能性もあります。

手取りを減らしたくないのでどうしても社会保険に加入したくないという場合には、勤務時間を週20時間未満に減らすなどの方法を検討する必要があります。
派遣労働者の場合は派遣先・派遣元どちらの人数が適用される?
派遣労働者の場合は、派遣「元」の会社の人数により判断され、派遣「元」の会社で社会保険に加入します。
一時的に週20時間未満の勤務になった時はどうする?
病気やけが、家庭の事情などで一時的に週20時間の要件を満たさなくなった場合はどうなるのでしょうか。

社会保険の加入要件については実際の勤務時間数ではなく雇用契約上の所定労働時間で判断されます。そのため、雇用契約上の所定労働時間は変わらず一時的に労働時間や日数が減少している場合であれば社会保険の加入資格はなくなりません。

また病気やけがでの休職の場合は、要件を満たせば健康保険から傷病手当金が支給されます。
国民健康保険に加入している従業員が社会保険に加入した場合の手続きは?
会社で社会保険の資格取得をした時点で、従業員自身で国民健康保険の脱退手続きをしてもらう必要があります。
離職を防ぐため、従業員の手取りを減らさない方法はない?
適用拡大により、従業員が社会保険加入を避けるために50人以下の会社に転職してしまうというケースも考えられます。

そのため従業員・会社の負担を防ぐ国の支援制度が2023年より導入されています。
①キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」
パート・アルバイトの従業員が厚生年金や健康保険に加入した際に 手取り収入を減らさない取組み(社会保険適用促進手当の支給、賃上げなど)を実施する企業に対し、 労働者1人当たり最大50万円の助成金が支給されます。

②社会保険適用促進手当を社会保険料の算定対象外に
年収106万円(月給約88,000円)を超えて新たに社会保険の加入対象となった従業員の手取りが減らないように「社会保険適用促進手当」を支給した場合、その分の金額については社会保険料の算定対象外とされます。

ただし社会保険適用促進手当については導入の際に注意点があります。
ひとつ目は給与の一部であるため、導入には就業規則への規定が必要であること。特例措置のある2年間だけ支給する場合には期限についても就業規則に定める必要があります。

二つ目は社会保険料の算定対象外にはなりますが雇用保険・労働保険や所得税・住民税については通常の取扱いとなり、保険料・税金がかかること。毎月支給される場合には割増賃金の計算の基礎にも含まれます。

新たに社会保険に加入する従業員の社会保険料負担が増えるのに加え、その他の保険料・税金や就業規則改定の事務負担も増えるため導入については慎重に検討しましょう。

まとめ

上記の通り、社会保険の適用拡大には会社と従業員それぞれにメリット・デメリットがあり、社会保険加入など事務手続きも必要になります。

適用開始まで間もないですが、やるべきことや情報を整理して10月1日に備えましょう。