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登録日:2024年10月25日

11月は閑散期?閑散期だからこそできる年末調整へのスタートダッシュのすすめ
11月に入ると今年も残り2ヶ月、あっという間に年末です。
年末、お察しの通り年末と言えば年末調整です。
年末調整は社内で実施、外部の税理士事務所等に依頼するなど、会社により様々です。
外部に依頼する場合も、必要な資料収集は社内で実施となっていることも多く、人事労務、給与計算に携わる方は何らかの形で関与する機会が多いです。

11月は人事労務担当者にとっては算定基礎届や労働保険の年度更新、障害者雇用状況等報告書等の提出や入退社の集中といった、他の月に見られる時季を限った業務はありません。
そのため、比較的余裕のあるこのタイミングを活用し、年末調整実施の直前になってバタバタしないように余裕を持って準備のうえ実施に備えましょう。

そもそもなぜ年末調整が必要?

毎月の給与から控除している所得税はその時の給与額、扶養親族の人数等が年末まで継続すると仮定して、仮に決まる税額に過ぎません。
例えば年の途中で昇給や転職等があれば給与額が大きく変動する可能性があります。
もしくは婚姻・出産等により扶養人数が変動することも想定されます。
こういった変動事項について、年度末時点で対象となる各種控除を反映させ、1年間で納付すべき税額を決定し過不足を調整するのが年末調整です。
詳しい解説は割愛しますが基礎控除、給与所得控除、配偶者控除は毎月の給与計算には反映されません。

また、扶養親族の人数に応じて決まる扶養控除は、毎月の給与計算時の人数をもとに仮計算しますが、最終的には年末時点での扶養親族の人数で税額が決まります。
このように、1年間のトータルの収入に対して、年度末時点での本人・扶養親族等の状況(障がい者・ひとり親など)や人数に応じて1年間で納付すべき税額を決定し、超過額を還付、もしくは不足額の徴収を行うのが年末調整です。

年末調整のスタートライン

年末調整を実施するにあたって、まず検討すべきはそのスケジュールです。
年末調整結果による税額の過不足を反映させるタイミングは大半が年内最後、もしくは年明け最初の給与支給日となります。
そこから逆算し、年末調整の対象者を見極めた上で、本当に必要な資料収集を依頼できるかどうか、が年末調整をスムーズに実施できるか否かを左右するポイントです。
年末調整の対象者
●甲欄の人
掛け持ちをしていない、もしくは掛け持ちをしていても自社の収入が主であり、自社に扶養控除申告書を提出している人です。
これは言い換えると、自社の毎月の給与から控除する所得税を税額表の「甲」欄で計算している人が年末調整の対象となります。

●収入が2,000万円以下の人
役員報酬の場合も含め、自社での給与額が2,000万円以下の人が年末調整の対象です。
こちらも言い換えると、自社での給与額が2,000万円を超える人は年末調整の対象外です。

●年内に給与の支給がある人
12月に入社した人であっても、自社の年内最後の給与、例えば12/15締め、12月25日支給の給与がある場合、その人は年末調整の対象者です。

●一部の年末退職者
年内に退職し、年内に他の収入を得ないことが明確な人、同じく上記の例で12月15日締め、同日に退職、12月25日支給給与が年内最後の収入となる場合、その人は年末調整の対象者です。
一方、次の職場に12/16に入社し、その会社が12月20日締め、12月31日支給ならその人は次の職場で年末調整の対象者となるため、自社での年末調整は対象外です。

年末調整の対象者選定が大切な理由

年末調整はその後の書類収集状況等継続した業務となりますので、この対象者の選定が不十分だと後々業務が煩雑になる恐れがあります。
と言うのも、対象者の選定が不十分だと次のような質問が想定されるからです。

・役員や高所得者から
「自分は本当に年末調整の対象者で、書類の提出が必要なのか?」

・実は掛け持ちしている従業員から
「実は途中から掛け持ちを始めたけど自分は対象者か?」
「掛け持ち先にも提出を求められておりどちらに提出すればいいのか?」

これらの他にも年末調整は年に1度ということもあり、年末調整を実施する担当者であってもなかなか仕組みが定着せず、また制度改正等もあり都度調べながらの実施も少なくありません。
そんな中、従業員からの問い合わせが集中すると回答に時間を要し、さらには明確な回答が得られずそのまま放置してしまう、なんてことにもなりかねません。

また、余裕を持った提出期限を設定することも重要です。
いくら期限を定めても、期限に間に合わないという従業員からの相談はゼロにはならないでしょう。
そんな時でも慌てることがないよう、提出期限には余裕を持たせ、そのためには少しでも早く従業員へ年末調整書類の提出を周知しましょう。

オンラインでの年末調整もオススメ

最近では人事労務、給与計算ソフトを手がける会社から提供される、従来の紙の申告書に代わって、クラウドシステムを使ったオンラインでの年末調整が普及してきています。
クラウドシステムでの年末調整には次のようなメリットがあります。

・従業員がPCやスマートフォンから手軽に年末調整に必要な情報をQ&A方式で入力できるため、従業員がより早く着手でき、正確さにも期待ができる。

・生命保険料控除証明書などの添付書類を一旦カメラで撮影、添付できるため、担当者等がより早く確認に着手できる。
※添付書類は後ほど原本を回収し、会社で保管が必要です。

・担当者もシステム上で書類の提出状況等を把握しやすい。

このようにメリットの多いクラウドシステムを使用しての年末調整ですが、
使用するシステムによって課金形態が異なります。
例えば、給与計算システムの利用料に含まれている場合もあれば、別途1人につきいくら、という従量課金の場合もあり、後者の方が多い印象です。
従量課金の場合、年末調整の対象者をしっかり把握できていれば、年末調整を実施する人数分だけの費用しか発生しません。
一方で、年末調整の対象者の把握が不十分な状態でシステムの利用を開始すると、結果的に年末調整の対象とならず、システムの利用を中断した従業員の人数分の費用も発生する恐れがあります。

このように、本来不要な費用が発生するおそれがあるのはシステムを使用する場合に限っての話ですので、システムを使用しての年末調整のデメリットとして押さえておきましょう。
もちろん、先にお伝えした進捗の追いかけ、本来年末調整の対象外である従業員からの問い合わせに時間を取られるおそれがあるのは紙、システムいずれの場合にも共通します。

そのため、年末調整の実施の第一歩となる対象者の選定は可能な限り正確に行うことをおすすめします。

11月を制する者は年末を制する

冒頭でお伝えした通り、11月は人事労務担当者にとっては比較的業務が少ない閑散期と言えます。

一方で12月に入ると年末調整の実施に翻弄されることとなるため、11月は嵐の前の静けさとも言えます。
そのため、今回は人事労務担当者としての11月の時間を有効活用することをイメージしていただけるよう、年末調整のスケジューリングについてお伝えしました。

11月はここでお伝えした年末調整の他にも、以下の業務に集中して取り組む機会になります。
・手続き書類の整理
・使用しているシステムの設定確認、見直し
・業務で使用するエクセルの数式や集計手順などの見直し など

この機会に人事労務担当者にとって閑散期にあたる11月の業務スケジュールを一度見直してみてはいかがでしょうか。