特集コンテンツ

  1. ホーム > 
  2. 特集コンテンツ > 
  3. 給与計算にミスが見つかったら?過不足額の正しい精算方法を解説

登録日:2024年11月05日

給与計算にミスが見つかったら?過不足額の正しい精算方法を解説
今年も例年通り10月に最低賃金が改定されました。
最低賃金の改定はひとつの例にすぎませんが、何か給与額に変更があった場合には給与計算ソフトや計算用のエクセルを最新の情報に更新する必要があります。
支給する給与の他にも給与から控除(天引き)する社会保険料や源泉所得税、住民税やその他寮費や弁当代、社内積立金や労働組合費など会社独自の控除額(法定外控除といいます)が変更になった場合も同様も最新の情報への更新が必要です。

ところがうっかり更新を忘れてしまい、変更前の金額で計算してしまったという場合には適切に差額を計算のうえ精算する必要があります。
今回は最低賃金の改定のタイミングに併せて給与振込後にミスが見つかった場合の正しい精算方法についてお伝えします。
ここからはご自身の給与明細と照らし合わせながら読み進めていただくとより理解が深まりますので、是非お手元に給与明細をご用意の上お読みください。

給与計算の項目を知る

給与計算にミスが見つかった場合の精算方法について理解を深めるためには給与計算の項目について知ったうえで、適切な過不足計算を行えることが何より重要です。
支給項目
支給項目は大きく次の2つに分類されます。
課税支給項目
源泉所得税の対象となる支給項目で、おおむね次の通りです。
・基本給、割増賃金、その他各種手当(固定残業代、家族手当、住宅手当など)
・通勤費(課税)

これらの合計額を課税対象額といいます。
非課税支給項目
源泉所得税の対象とならない支給項目で、多くの場合次の2つです。

・通勤費(非課税)
非課税の通勤費であっても社会保険料の対象となります。

・経費精算額
便宜上給与と併せて支給しているだけですので、源泉所得税はもちろん社会保険料の対象からも外れます。
ただし、経費精算として認められない不適切に過剰な額である場合はこの限りではありません。

課税対象額にこれら非課税支給額を加えて総支給額といい、そこから経費精算額を除いた額を基に社会保険料が決定されます。
控除項目
次は給与から控除(天引き)される項目ですが、大きく次の3つに分類されます。
総支給額を基に計算するもの
・社会保険料
社会保険料という表現には2つの意味があり、登場するシーンにおいてどちらを指すか適切に判断する必要があります。

1.健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料(+基金保険料)の合計額
狭義の社会保険料と表現することもありますが、いわゆる健康保険料と年金保険料を指します。
これらの保険料は毎月の給与を基に計算するのではなく、資格取得時や定時決定など、ある時点もしくは特定の期間の給与額を基に、その後一定期間の保険料が決定されます。

2.1の額+雇用保険料
1の社会保険料に加え、雇用保険料を含めたものを指します。雇用保険料は1の(狭義の)社会保険料とは異なり、毎月の総支給額を基に計算します。
ここでは、総支給額から経費精算額と上記2の社会保険料を控除した額を課税対象額といいます。
課税対象額を基に計算するもの
・源泉所得税
源泉所得税は課税対象額を基に、自身・扶養親族の障害状態や人数等に応じて決まります。
前もって金額が決定しているもの
・住民税
住民税は前年の所得に応じて決まるため、その月の給与額とは連動しません。

・法定外控除
寮費や弁当代、社内積立金や労働組合費も毎月の給与額とは独立して決まっていることが大半です。

これら控除額の合計を総支給額から差し引いたものが差引支給額(手取り額)です。

総支給額の過不足を計算する

ここまでの内容を基に、単に項目の差額だけでいいのか、連動する項目があるのかについて把握したうえで過不足額を計算します。
社会保険料に連動する項目
課税支給額、非課税通勤費
源泉所得税に連動する項目
課税支給額、社会保険料
源泉所得税、社会保険料いずれにも連動しない項目
経費精算額、住民税、法定外控除

これらの分類を参照し、ミスのあった項目だけでなく、連動する項目も正しく修正できているか、もしくは連動しない項目に不要な変動が生じていないか慎重に確認のうえ差引支給額の過不足額を算出します。

過不足額の精算方法

ミスが見つかったタイミングにもよりますが、次の2つの方法があります。
追加支給
差引支給額に不足が生じている場合は速やかに追加で支給するのが労働基準法に定められている給与の全額払いの原則に照らして理想的です。
翌月給与で調整
差引支給額に不足が生じている場合であっても、実際は次月の給与計算時に修正することが大半で、実務上対象となる従業員に説明の上理解を得られれば大きなトラブルになるおそれは極めて少ないといえます。
次月の給与計算時に修正する場合は、差引支給額の過不足ではなく、項目の差額を反映のうえ計算します。
差引支給額の過不足を前月過不足等の項目で支給する場合、社会保険料や源泉所得税を2重に徴収、もしくは結果的に免除してしまうこととなるため、あくまで項目の過不足額で計算します。
給与と賞与の間での調整は厳禁
給与と賞与では社会保険料、源泉徴収税額の計算方法が異なるため、給与と賞与の間での調整は厳禁で、追加支給(徴収)で対応するのが鉄則です。

最後に

給与計算にミスが見つかった場合の修正方法についておおまかに解説しましたが、まずはこういったミスが生じないよう、給与項目の額の変動はリストで管理するなどして給与計算を正確に行うことが何より大切です。
また、差額の精算だけで済めばいいですが、そもそも社会保険加入時の基本給を後から見直した、随時改定の判定期間中の給与額に誤りがあった、賞与の額を修正した等の場合には年金事務所への訂正手続きが発生することになります。
さらに、社会保険料については介護保険料の徴収開始・終了、産休・育児の際の免除等ミスの生じやすいポイントが多いため、これら年金事務所への訂正が必要なケースについてはまた別の機会にお伝えできればと思います。