登録日:2024年07月10日
労働保険の年度更新と社会保険の定時決定とは?概要と手続き実務・よくある質問を解説
「年更」・「算定」と呼ばれる手続きが発生する6月・7月は社労士事務所の一番の繁忙期です。
本記事では労働保険の年度更新と社会保険の定時決定について実務上のポイントを踏まえて詳しく解説します。
本記事では労働保険の年度更新と社会保険の定時決定について実務上のポイントを踏まえて詳しく解説します。
労働保険の年度更新・社会保険の定時決定(算定基礎届)とは?
●労働保険の年度更新
労働保険(労災保険・雇用保険)について納付する保険料の金額を決定し、保険料を納付するための手続きを年度更新と言います。社労士事務所の実務上は「年更」と省略して呼ばれるケースが多い手続きです。
年度更新では、昨年度(昨年4/1〜今年3/31)に支給した給与の金額を元に、昨年度の確定保険料と今年度の概算保険料を算出します。
保険料の概算金額を支払う→翌年度の年度更新時に確定した金額で保険料を精算する、というサイクルを毎年繰り返すことになります。
雇用保険料は毎月従業員の給与から控除していますが、保険料を毎月納付する社会保険料とは異なり、納付するのは年1回、年度更新時のみです。労災保険については従業員負担分がないため、会社負担分のみを雇用保険料とともに年に1回納付します。
●社会保険の定時決定(算定基礎届)
社会保険の定時決定とは、4月から6月の報酬金額をもとに、その年の9月以降1年間の標準報酬月額(社会保険料の計算の基礎となる報酬額)を決定するための手続きを指します。定時決定は、年金事務所へ「算定基礎届」を提出して行うため、実務上は「算定」と省略して呼ばれています。
定時決定された標準報酬月額は昇給や降給が発生しない限り、翌年の定時決定まで適用されます。
労働保険(労災保険・雇用保険)について納付する保険料の金額を決定し、保険料を納付するための手続きを年度更新と言います。社労士事務所の実務上は「年更」と省略して呼ばれるケースが多い手続きです。
年度更新では、昨年度(昨年4/1〜今年3/31)に支給した給与の金額を元に、昨年度の確定保険料と今年度の概算保険料を算出します。
保険料の概算金額を支払う→翌年度の年度更新時に確定した金額で保険料を精算する、というサイクルを毎年繰り返すことになります。
雇用保険料は毎月従業員の給与から控除していますが、保険料を毎月納付する社会保険料とは異なり、納付するのは年1回、年度更新時のみです。労災保険については従業員負担分がないため、会社負担分のみを雇用保険料とともに年に1回納付します。
●社会保険の定時決定(算定基礎届)
社会保険の定時決定とは、4月から6月の報酬金額をもとに、その年の9月以降1年間の標準報酬月額(社会保険料の計算の基礎となる報酬額)を決定するための手続きを指します。定時決定は、年金事務所へ「算定基礎届」を提出して行うため、実務上は「算定」と省略して呼ばれています。
定時決定された標準報酬月額は昇給や降給が発生しない限り、翌年の定時決定まで適用されます。
労働保険の年度更新・社会保険の定時決定の手続き実務
●労働保険の年度更新
年度更新の手続きは毎年6月1日から7月10日までの間に実施します。
年度更新の大まかな流れとしては、以下のようになります。
① 賃金集計表に全従業員の昨年4月1日から今年3月31日までの月毎の給与額を記入し、合計金額を算出する
② 申告書に上記の合計額と保険料率を記入し、保険料額を算出する
③ 申告書を提出し、保険料を納付する
年度更新で提出する申告書は例年5月中旬〜下旬ごろに緑色の封筒に入って会社に届きます。給与の合計額や保険料額は同封されている賃金集計表を用いて手で計算することもできますが、従業員数が多い会社ではかなりの手間がかかり計算ミスのリスクもあります。
給与計算のシステムを利用している場合は年度更新用の賃金集計機能がついているものがほとんどですので、まずはシステムからの出力ができないか確認してみましょう。給与計算システムを利用していない場合、うまく出力できない場合は厚生労働省のホームページでダウンロードできるExcelの「年度更新申告書計算支援ツール」の使用がおすすめです。
労災保険・雇用保険の保険料率は職種により異なります。
例)事務系の職種の場合
・労災保険:3/1,0000
・雇用保険:労働者負担分6/1,000+会社負担分9.5/1000
申告書の提出は紙の申告書を都道府県労働局、労働基準監督署に持参・郵送するだけでなく電子申請も可能です。
●社会保険の定時決定(算定基礎届)
7月1日時点で在職中かつ社会保険に加入している従業員・70歳以上の従業員が定時決定の対象となります。
ただし、下記の従業員については例外的に定時決定の対象にはなりません。
・6月1日以降に社会保険に加入した人
・7月の随時改定で月額変更届を提出する人
・8月または9月に随時改定の予定があると申し出ている人
上記に当てはまらなければ、育児休業や病気での休職により4月から6月の給与が支給されていない方も対象になるので要注意です。
算定基礎届は、毎年7/1〜7/10の間に提出します。提出先は管轄の年金事務所で、年度更新と同様に電子申請も可能です。
提出期限は10日間とかなり短いですが、4月・5月・6月に支給した給与を記入し提出するので、6月支給の給与額が確定した段階で書類を準備しておくとスムーズに対応できます。
また算定基礎届も給与計算システムを利用していれば、自動的に入力されたものを出力できる場合がほとんどです。
算定基礎届の提出後は7月下旬〜8月ごろに標準報酬決定通知書が届きます。標準報酬月額が改定されるのは9月からですので、社会保険料を翌月控除で徴収している会社では10月支給の給与から控除する社会保険料の金額が変更になります。
年度更新の手続きは毎年6月1日から7月10日までの間に実施します。
年度更新の大まかな流れとしては、以下のようになります。
① 賃金集計表に全従業員の昨年4月1日から今年3月31日までの月毎の給与額を記入し、合計金額を算出する
② 申告書に上記の合計額と保険料率を記入し、保険料額を算出する
③ 申告書を提出し、保険料を納付する
年度更新で提出する申告書は例年5月中旬〜下旬ごろに緑色の封筒に入って会社に届きます。給与の合計額や保険料額は同封されている賃金集計表を用いて手で計算することもできますが、従業員数が多い会社ではかなりの手間がかかり計算ミスのリスクもあります。
給与計算のシステムを利用している場合は年度更新用の賃金集計機能がついているものがほとんどですので、まずはシステムからの出力ができないか確認してみましょう。給与計算システムを利用していない場合、うまく出力できない場合は厚生労働省のホームページでダウンロードできるExcelの「年度更新申告書計算支援ツール」の使用がおすすめです。
労災保険・雇用保険の保険料率は職種により異なります。
例)事務系の職種の場合
・労災保険:3/1,0000
・雇用保険:労働者負担分6/1,000+会社負担分9.5/1000
申告書の提出は紙の申告書を都道府県労働局、労働基準監督署に持参・郵送するだけでなく電子申請も可能です。
●社会保険の定時決定(算定基礎届)
7月1日時点で在職中かつ社会保険に加入している従業員・70歳以上の従業員が定時決定の対象となります。
ただし、下記の従業員については例外的に定時決定の対象にはなりません。
・6月1日以降に社会保険に加入した人
・7月の随時改定で月額変更届を提出する人
・8月または9月に随時改定の予定があると申し出ている人
上記に当てはまらなければ、育児休業や病気での休職により4月から6月の給与が支給されていない方も対象になるので要注意です。
算定基礎届は、毎年7/1〜7/10の間に提出します。提出先は管轄の年金事務所で、年度更新と同様に電子申請も可能です。
提出期限は10日間とかなり短いですが、4月・5月・6月に支給した給与を記入し提出するので、6月支給の給与額が確定した段階で書類を準備しておくとスムーズに対応できます。
また算定基礎届も給与計算システムを利用していれば、自動的に入力されたものを出力できる場合がほとんどです。
算定基礎届の提出後は7月下旬〜8月ごろに標準報酬決定通知書が届きます。標準報酬月額が改定されるのは9月からですので、社会保険料を翌月控除で徴収している会社では10月支給の給与から控除する社会保険料の金額が変更になります。
労働保険の年度更新・社会保険の定時決定の注意点
●年度更新・定時決定に算入する給与の期間は勤務日ベース?支給日ベース?
実務上も悩みやすいポイントですが、年度更新は勤務日ベース・定時決定は支給日ベースで考えます。
具体例として、末日締め・翌月15日払いで給与を支給している場合、以下の給与が算入されます。
・労働保険の年度更新:昨年5/15支給〜本年4/15支給分(昨年4/1〜本年3/31勤務分)
・社会保険の定時決定:4/15・5/15・6/15支給分
●年度更新・定時決定上に算入する給与には交通費も含む?
交通費も含みます。交通費の他に、残業手当・家族手当・住宅手当等も対象となります。
定時決定でも残業手当は計算に含まれるため、「4〜6月に残業をしすぎると社会保険料が高くなる」と言われているのもよく耳にします。
反対に対象とならないものは、立替経費・出張旅費のような実費補填にあたるもの、結婚祝い金や慶弔見舞金といったものです。
●産休・育休中で給与の支給がない従業員についてはどうなる?
年度更新においては給与の支給がないため算入する金額はありませんが、労働者数には産休・育休中の従業員も含めます。
定時決定においても、支給額が0円でも提出が必要です。給与の支給がないため報酬額は0円で記入した上で「病休・育休・休職等」というチェックボックスにチェックを入れます。
実務上も悩みやすいポイントですが、年度更新は勤務日ベース・定時決定は支給日ベースで考えます。
具体例として、末日締め・翌月15日払いで給与を支給している場合、以下の給与が算入されます。
・労働保険の年度更新:昨年5/15支給〜本年4/15支給分(昨年4/1〜本年3/31勤務分)
・社会保険の定時決定:4/15・5/15・6/15支給分
●年度更新・定時決定上に算入する給与には交通費も含む?
交通費も含みます。交通費の他に、残業手当・家族手当・住宅手当等も対象となります。
定時決定でも残業手当は計算に含まれるため、「4〜6月に残業をしすぎると社会保険料が高くなる」と言われているのもよく耳にします。
反対に対象とならないものは、立替経費・出張旅費のような実費補填にあたるもの、結婚祝い金や慶弔見舞金といったものです。
●産休・育休中で給与の支給がない従業員についてはどうなる?
年度更新においては給与の支給がないため算入する金額はありませんが、労働者数には産休・育休中の従業員も含めます。
定時決定においても、支給額が0円でも提出が必要です。給与の支給がないため報酬額は0円で記入した上で「病休・育休・休職等」というチェックボックスにチェックを入れます。
まとめ
本記事では労働保険の年度更新と社会保険の定時決定について概要と手続きの流れ・よくある質問について解説しました。
提出タイミングも重なり実務上は大変な時期にはなりますが、いずれも保険料や従業員の将来の年金額を決定するための重要なものです。それぞれの手続きのポイントをおさえ期限内に提出できるよう努めましょう。
提出タイミングも重なり実務上は大変な時期にはなりますが、いずれも保険料や従業員の将来の年金額を決定するための重要なものです。それぞれの手続きのポイントをおさえ期限内に提出できるよう努めましょう。