登録日:2024年12月05日
【年末特集】話題の「扶養の壁」をマスター 第1回:103万円の壁
現在国会において「扶養の壁」を引き上げる議論が盛り上がっています。連日ニュースや新聞でも取り上げられていますので、社労士の仕事に興味のある皆様には気になる話題であることでしょう。
社会保険労務士試験の勉強において扶養といえば健康保険法での被扶養者、国民年金の第3号被保険者として登場しますが、社労士実務において多くの質問が寄せられるため、胸を張って回答するには税法上の扶養の取り扱いを含め正しい知識を持つことが不可欠です。
そこで、今話題になっている年収の壁引き上げにスポットライトを当て、社労士として知っておくべき扶養について全3回に分けて解説していきます。
なお、年末調整全体の基本知識についてはこちらのコラムで解説していますので、年末調整ってそもそも何のため?という方は先にお読みいただくと今回のコラムでお伝えする内容についての理解がより深まりますので是非先にお読みください。
年末調整全体の基本知識
社会保険労務士試験の勉強において扶養といえば健康保険法での被扶養者、国民年金の第3号被保険者として登場しますが、社労士実務において多くの質問が寄せられるため、胸を張って回答するには税法上の扶養の取り扱いを含め正しい知識を持つことが不可欠です。
そこで、今話題になっている年収の壁引き上げにスポットライトを当て、社労士として知っておくべき扶養について全3回に分けて解説していきます。
なお、年末調整全体の基本知識についてはこちらのコラムで解説していますので、年末調整ってそもそも何のため?という方は先にお読みいただくと今回のコラムでお伝えする内容についての理解がより深まりますので是非先にお読みください。
そもそも扶養って?
今回コラム執筆にあたって改めて辞書で「扶養」について調べてみました。
ふ‐よう〔‐ヤウ〕【扶養】
読み方:ふよう
[名](スル)助け養うこと。生活できるように世話すること。「両親を—する」
(引用)Weblio国語辞典
ふ‐よう〔‐ヤウ〕【扶養】
読み方:ふよう
[名](スル)助け養うこと。生活できるように世話すること。「両親を—する」
非常に大きな視点で示されています。もちろんそのとおり間違いないのですが、年収の壁問題への理解を深めるにはもう一歩踏み込んで調べる必要がありそうです。
顧問先のお客様より「新しいパートさんが家族の扶養に入りたいんですけど、何時間まで働いてもらえますか?」という質問は日常茶飯事です。そんなとき、これから解説する内容をズバリ回答できればお客様からの信頼度がぐっとあがることでしょう。
顧問先のお客様より「新しいパートさんが家族の扶養に入りたいんですけど、何時間まで働いてもらえますか?」という質問は日常茶飯事です。そんなとき、これから解説する内容をズバリ回答できればお客様からの信頼度がぐっとあがることでしょう。
扶養の分類その① 税法上の扶養
さて、そろそろ本題に入りましょう。
まずは税法上の扶養、最近話題の103万円の壁について解説します。
なるべくシンプルにお伝えするために、103万円の壁を意識して働く人、その配偶者の年収が平均から大きく外れないことを前提に解説を進めます。そのため、今回のケースには当てはまらない規定やルールなど割愛する部分分もありますこと、ご了承ください。
さて、年間収入が額面で103万円を超えると次の2つの変化が生じます。
①本人に所得税が発生する
②配偶者の所得税が高くなる
順に解説します。
まずは税法上の扶養、最近話題の103万円の壁について解説します。
なるべくシンプルにお伝えするために、103万円の壁を意識して働く人、その配偶者の年収が平均から大きく外れないことを前提に解説を進めます。そのため、今回のケースには当てはまらない規定やルールなど割愛する部分分もありますこと、ご了承ください。
さて、年間収入が額面で103万円を超えると次の2つの変化が生じます。
①本人に所得税が発生する
②配偶者の所得税が高くなる
順に解説します。
①本人の所得税
先の結論のとおりですが、給与収入が103万円を超えると本人に所得税が発生します。
その意味で、税法上の扶養の定義は103万円、というイメージで問題ありません。
話をシンプルにするために掛け持ち、副業はせず、社会保険、雇用保険にも加入せず、年間の給与合計が100万円程度と想定します。
基礎知識として、所得税は次のように計算されます。
収入−控除=所得
所得×税率=所得税
つまり、給与収入全額に所得税が発生するわけではなく、税金計算の対象から一定額を除くことができ、これを控除と言います。
控除のひとつに「基礎控除」があります。
基礎控除は、所得額が2,400万円以下の場合、48万です。
また、給与収入のある人が受けられる控除として「給与所得控除」があります。
給与所得控除は給与収入が162.5万円以下の場合、55万円です。162.5万円を超える場合については以下のとおりです。
(引用)給与所得控除|国税庁
その意味で、税法上の扶養の定義は103万円、というイメージで問題ありません。
話をシンプルにするために掛け持ち、副業はせず、社会保険、雇用保険にも加入せず、年間の給与合計が100万円程度と想定します。
基礎知識として、所得税は次のように計算されます。
収入−控除=所得
所得×税率=所得税
つまり、給与収入全額に所得税が発生するわけではなく、税金計算の対象から一定額を除くことができ、これを控除と言います。
控除のひとつに「基礎控除」があります。
基礎控除は、所得額が2,400万円以下の場合、48万です。
また、給与収入のある人が受けられる控除として「給与所得控除」があります。
給与所得控除は給与収入が162.5万円以下の場合、55万円です。162.5万円を超える場合については以下のとおりです。
つまり、収入が給与のみで100万円程度の場合、額面から給与所得控除として55万円が控除され、残った所得額から基礎控除として48万円が控除され、さらに残った額に税率をかけます。
扶養を検討する範囲内の収入であれば55万円+48万円=103万円の控除が受けられるため、収入が103万円以下であれば所得額はゼロとなり所得税が発生しません。
なお、給与収入が103万円以下を想定していた人が残業や想定外の勤務増加により103万円を数万円程度超過した場合、超過額×5%の所得税が発生します。
本人の所得税については以上です。
扶養を検討する範囲内の収入であれば55万円+48万円=103万円の控除が受けられるため、収入が103万円以下であれば所得額はゼロとなり所得税が発生しません。
なお、給与収入が103万円以下を想定していた人が残業や想定外の勤務増加により103万円を数万円程度超過した場合、超過額×5%の所得税が発生します。
本人の所得税については以上です。
②配偶者(世帯主)の所得税
次に配偶者(世帯主)の所得税について解説します。
こちらも結論を先にお伝えした結論のとおりですが、自分に所得税が発生する場合、所得税が発生しない場合に比べて配偶者の所得税が高くなります。
年収103万円以下の配偶者がいる場合、給与所得控除、基礎控除に加えて48万円の配偶者控除を受けられます。
また、配偶者が世帯主の場合は勤務先で社会保険に入っていることが想定され、支払った社会保険料も社会保険料控除として所得から控除されます。
ここでも話をシンプルに、会社勤めで年収500万円程度と想定します。
給与収入が500万円の場合、給与所得控除は先ほどの図より500万円×20%+44万円=144万円、社会保険料は額面の約20%のため、社会保険料控除は100万円とします。
ここから、配偶者控除の有無による所得税額の違いを試算します。
・配偶者控除がある場合
(引用・加工)年末調整計算シート|国税庁
こちらも結論を先にお伝えした結論のとおりですが、自分に所得税が発生する場合、所得税が発生しない場合に比べて配偶者の所得税が高くなります。
年収103万円以下の配偶者がいる場合、給与所得控除、基礎控除に加えて48万円の配偶者控除を受けられます。
また、配偶者が世帯主の場合は勤務先で社会保険に入っていることが想定され、支払った社会保険料も社会保険料控除として所得から控除されます。
ここでも話をシンプルに、会社勤めで年収500万円程度と想定します。
給与収入が500万円の場合、給与所得控除は先ほどの図より500万円×20%+44万円=144万円、社会保険料は額面の約20%のため、社会保険料控除は100万円とします。
ここから、配偶者控除の有無による所得税額の違いを試算します。
・配偶者控除がある場合
所得税額は8万円です。
・配偶者控除がない場合
(引用・加工)年末調整計算シート|国税庁
・配偶者控除がない場合
所得税額は11.05万円です。
結果、配偶者控除の有無による所得税額の差額は3.05万円です。
所得額が高くなればなるほど所得税率も高くなる(累進課税といいます)ため、税率が高くなればなるほど、配偶者控除の有無による差額も大きくなります。
結果、配偶者控除の有無による所得税額の差額は3.05万円です。
所得額が高くなればなるほど所得税率も高くなる(累進課税といいます)ため、税率が高くなればなるほど、配偶者控除の有無による差額も大きくなります。
また、今回のケースのように配偶者控除の有無で所得税率が変わる場合、差額は変動します。
103万円の壁=所得税・配偶者控除の基準額
年末特集第1回は103万円の壁について解説しました。
おさらいですが、103万円の壁を超えると①本人に所得税が発生する②配偶者の所得税が高くなる、でしたね。
特に②の変化が大きいので、103万を超えた分に所得税が発生するだけでしょ?と思っていた方はこれを機に②もしっかり覚えておきましょう。
次回は今回書ききれなかった103万円の壁についての補足と130万円の壁について解説しますので、次回もお読みいただけましたらうれしい限りです。
おさらいですが、103万円の壁を超えると①本人に所得税が発生する②配偶者の所得税が高くなる、でしたね。
特に②の変化が大きいので、103万を超えた分に所得税が発生するだけでしょ?と思っていた方はこれを機に②もしっかり覚えておきましょう。
次回は今回書ききれなかった103万円の壁についての補足と130万円の壁について解説しますので、次回もお読みいただけましたらうれしい限りです。