特集コンテンツ

  1. ホーム > 
  2. 特集コンテンツ > 
  3. 【年末特集】話題の「扶養の壁」をマスター 第2回:106万円・130万円の壁

登録日:2024年12月15日

【年末特集】話題の「扶養の壁」をマスター 第2回:106万円・130万円の壁
前回より年末特集と題して、「扶養の壁」をテーマに連続コラムとして3回に分けてお送りしています。

第1回となる前回は税法上の扶養、特に最近話題の103万円の壁について解説しました。
まだお読みでない方は先にリンク先のコラムをお読みいただくと今回の内容の理解度がぐっと増しますので是非先にお読みください。
【年末特集】話題の「扶養の壁」をマスター 第1回:103万円の壁
年末特集第2回目となる今回は、こちらもまた最近話題の106万・130万円の壁について解説します。

扶養の分類その② 社会保険上の扶養(106万円・130万円)

前回、103万円の壁を超えると
・本人に所得税が発生する。
・配偶者の所得税が高くなる。
とお伝えしました。

この103万円の壁を超えるかどうかで、税法上の扶養に該当するかしないか、ということになります。
ここまでの内容が扶養の分類その①税法上の扶養についてのものになります。

ここからは扶養の分類その②社会保険法上の扶養について、106万円・130万円の壁の2つを解説します。

130万円の壁

先に130万円の壁について解説します。

今回も先に結論をお伝えすると、年収が130万円以上になると、配偶者の社会保険の扶養から外れてしまいます。
配偶者の社会保険の扶養に入るためには「年収130万円未満」という条件があるため、この条件を満たさず配偶者の扶養に入ることはできません。
既に配偶者の扶養に入っている場合は扶養から外れることになります。

そればかりか、パート先が個人経営かつ5人未満のサービス業などの場合を除いて、自身が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しなければなりません。
そのため、税法上の扶養の枠内である103万円以内におさめるのは難しいとしても、130万円「未満」の枠内で働くことで、自身は社会保険料を負担することなく配偶者の扶養に入ることを重要視されるパート労働者の方は非常に多いです。
自身で社会保険に入る場合と配偶者の扶養として入る場合で健康保険の給付内容、将来の年金への反映額が異なりますが、それでもなお保険料負担のない配偶者の扶養が魅力的であることは多数の同意を得られることと思います。

前回解説した103万円の壁は「超える」でしたが、今回紹介する2つの壁は「以上」ですので106万円・130万円ちょうどを含みます。それぞれの壁の金額ちょうどを含むか含まないか、混同しないよう注意が必要です。
103万円の壁は飛び越えるイメージ、106万円・130万円の壁はちょうど壁のてっぺんに乗っかっている状態をイメージしてください。

106万円の壁

社会保険上の壁は少し前までこの130万円の壁ひとつだけでしたが、2016(平成28)年10月の社会保険適用拡大により新たにできたもうひとつの壁が「106万円の壁」です。
こちらも先に結論をお伝えすると、パート先が一定規模以上の場合、社会保険に加入する、誤解を恐れずに言うと加入しなければならない基準が先ほどの130万円から106万円に下がります。
社会保険の適用拡大が実施される前は、多くの場合、週の所定労働時間が30時間以上の場合にパート先で社会保険の加入が必要でした。
そのためパートで働く方の多くが週30時間未満で働くことを希望し、会社側もできるだけ人件費を抑えたく、働く側・雇う側の意向が一致していました。

それが2016年に始まった社会保険適用拡大により、社会保険の加入条件が以下のとおりに変更されました。

・パート先に従来の基準で社会保険に加入している人数が51人(※)以上いること
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・残業代を除く月の収入が88,000円以上(年間106万円以上)
・2カ月以上の雇用継続が見込まれること
・学生でないこと

※2016年10月より501人以上、2022年10月より101人以上、2024年10月より51人以上に変更になっています。

これにより、パート先が一定規模以上の場合、週に20時間以上かつ年間収入が106万円以上
である場合には社会保険に加入することとなり、従来の130万円の壁に取って代わることとなりました。
政府としては社会保険加入の条件を緩和することで老後の年金の強化、自身を扶養する親族がいない労働者も社会保険制度がカバーすることを目的に社会保険の適用拡大に踏み切り、対象となるパート先の人数規模を小さくしてきています。

ところが、扶養の範囲内で働くことを希望する労働者視点で見ると、それまでよりも働ける時間数が短くなり、働き控えを助長することとなりました。
106万円の壁は現在フルタイム、もしくは週に30時間以上働き社会保険に加入する労働者が51人以上の事業場にのみ立ちはだかっていますが、政府としてこの事業規模要件を撤廃する方向で議論を進めており、そうなれば近い将来一部を除くすべての勤務先で従来の130万円の壁に代わって106万円の壁が立ちはだかることとなります。

なお、106万円の壁ですが、2025年以降「106万円の壁撤廃」と連日報道されています。
ただし、ここで勘違いしてはいけないのが、106万円の壁そのものがなくなるわけではないことです。

「106万円の壁撤廃」と聞くと、扶養の範囲内で働くことを希望するパート労働者にとっては朗報にも聞こえますが、残念ながら朗報でも何でもありません。最低賃金の全国加重平均が1,055円となった現在、週に20時間以上働く場合、月の収入は当然88,000円を大きく上回ることになります。

このことから、「月の収入が88,000円以上」つまり「年間収入が106万円以上」という要件が意味をなさなくなり社会保険の加入要件から削除されるだけの話です。
今後は「106万円の壁」改め「週20時間の壁」になる可能性が高いでしょう。

106万円・130万円の壁=配偶者の社会保険の扶養に入れるかの基準額

年末特集第2回は106万円・130万円の壁について解説しました。

今回のおさらいです。

130万円の壁を超えると
①配偶者の社会保険の扶養に入れない、扶養から外れる
②自身がパート先で社会保険に加入し保険料が天引きされ、手取り額が減少する
でしたね。

さらに、社会保険適用拡大前の条件で従業員のうち51人以上が社会保険に加入しているパート先の場合、106万円の壁を超えると
①自身がパート先で社会保険に加入し保険料が天引きされ、手取り額が減少する
②130万円の壁を超えていなくても、①で社会保険に加入するため配偶者の社会保険の扶養から外れる
でしたね。

金額が異なるため2つの壁が金額順に並んで存在するかと思いきや、勤務先の人数規模によって立ちはだかる壁が異なるものの、超えた場合の結論は同じというのが今回の106万円・130万円の壁でした。

次回は税法上の扶養について住民税のことを少しだけお話しし、これまでの話を踏まえて103万円の壁引き上げ議論についてお伝えする予定です。

次回で完結予定の年末特集、是非最終回もお読みいただけるとうれしい限りです。